不倫なら探偵

ところが、これはどうしたのだ。そこにもまた、実に変てこなことが起っていたではないか。「へえ、わしは、そんな悪いこととは知らねえで、十円の金に目がくれて、そいつのいいつけ通りやったまでです。わしは、何も知らねえ者です」男は、不倫なら探偵をとって、しきりと詫言を並べていた。「僕はこいつを知っている。この山内に野宿している新米の子持ち乞食だ。あの洋服を着せられているのは、こいつの幼児なんだよ」一人の調査員が、男の言葉を裏書した。「それで、貴ようが贋の幼児と引換えに、金を受取ると、どっかに待受けている、その頼んだ男の所へ、持って行く約束なんだな」別の調査員が、乞食を睨みつけて呶鳴った。「いんや、金を受取れなんて、いやしねえ。ただ、女の人が四角な包を持って来るから、それをもらって、どっかへ捨っちまえ、といったばかりで」「ほう、そいつは妙だね。すると、どろぼうの方では、金包が報道紙だということを、ちゃんと知っていたんだな」何だか狐につつまれたような、変な具合だ。「そいつの顔を覚えているだろう。どんな奴だった」また一人の調査員が尋ねた。「それが分らねえです。大きな黒眼鏡をかけて、ますくをつけて、その上外套の袖を顔へ当てて、物をいっていたんで……」ああ、この風体!読者は恐らく、ある助手を思い出されたことであろう。「ふん、合とんびを着ていたのか」