不倫なら興信所

「へえ、新しい上等の奴を着ておりました」「年配は?」「はっきり分らねえが、六十位の爺さんでがした」調査員達は、この子持ち不倫なら興信所を、一応ポリス署に同行して、なおきびしく取調べたが、上野公園で聞き取った以上のことは何も分らなかった。態々女装までして、のこのこ出かけて行った探偵は、実に間の悪い思いをしなければならなかった。彼はそこそこに、調査員達に挨拶をしておいて、通りがかりのたくしーの中へ逃げ込んで、検察官家に引返した。帰って見ると、更に驚くべき現場が、彼を待受けていた。「奥さんは、さい前、あなたからのお手紙でお出掛けになりました」という主婦の言葉だ。「手紙?僕はそんなもの書いた覚えはないが、その手紙が残っていたら見せて下さい」探偵は烈しい不安の為に、胸をわくわくさせて、叫んだ。主婦が探し出して来た手紙というのは、何の目印もない、ありふれた封筒、ありふれた用紙、それに巧みに探偵の筆跡を真似て、こんなことが書いてあった。助手よう。この車に乗って直ぐ来て下さい。まゆこちゃんが、我をして、今病院へ担ぎ込んだ所です。早く来て下さい。上野、北川病院にて、探偵。それを読むと、探偵は真青になって、いきなり玄関脇のメール室に飛込み、惶しくポリス署を呼び出した。手紙にある北川というのは、実在の病院だが、助手がそこへ行っていないのは、分り切っている。