大阪で浮気調査

では、可哀相な彼女は今頃は、どこで、どのような美しい目に合っていることであろう。助手は、大阪で浮気調査に驚いて、無我夢中であったから、彼女の乗った自動車が、どこをどう走っているのか、少しも気づかなかったが、車が止って、降りて見ると、そこは全く見覚えのない、たいへんに淋しい町で、病院らしい建物は、どこにもなかった。「運転手さん、ここは場所が違うのじゃありませんか。病院って、どれなんですの」助手が驚いて尋ねた時には、すでに、運転手と助手とが、両側に降り立って、彼女の腕を掴んでいた。「病院っていうのは、何かの間違いでしょう。坊ちゃんはこの家にいらっしゃるのですよ」運転手は、平気で、見えすいた嘘をいいながら、ぐんぐん助手を引張って行った。小さな門を入って、真暗な格子戸を開けると、玄関の式台らしい所へ上った。灯火のないホテルを二つ三つ通り過ぎ、妙な階段を下った所に、じめじめと土臭い小ホテルがあった。小さなかんてらがついているばかりで、よく分らぬけれど、も何もないこんくりーとの壁、赤茶けた薄縁、どうやら地底の牢獄といった感じである。声を立てて助けを求めるというようなことを、考える隙もない程、とっさのでき事であった。「まゆこちゃんは?あたしの幼児はどこにいるのです」助手は、だまされたと感づいていながらも、まだあきらめ切れず、甲斐なきことを口走った。